オンライン講座「植物時間」より
トドマツ
椴松 Abies sachalinensis
マツ科の精油は呼吸器を助ける、痛みを取るという伝統的な使われ方をしてきました。
サナトリウムがマツの林のそばに建てられることが多かったことからもうかがわれます。
トドマツは美しい樹形で北海道に多く分布しています。
冬に厳しい寒さが続くと凍裂といって、バーンと大きな音を立てて縦に割れるそうです。
夜中に聞こえてくると悲鳴のようで可哀想に思えるそうです。
北海道滝上町の樹木の凍裂
松ヤニが取れるところがボコボコと膨らんでいて、アイヌの人はこの膨らみを「腫れ物」の意味の「フプ」とみたて、トドマツをフプと呼んでいるそうです。北海道でトドマツの森がフプの森と呼ばれているのを聞いたことがあります。
トドマツの精油の特徴のひとつに「大気汚染の原因物質である二酸化窒素の除去」があります。花粉は大気汚染と一緒になると1万倍凶暴化することがわかっていて、その大気汚染の部分を除去することによってアレルギー症状の原因となる花粉をぐっと無力化してくれることになります。
樹木精油ガス(かおり)による二酸化窒素の除去能力比較
こちらの表は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のホームページから許可をいただいて掲載しています。
JSTホームページの本文には、「トドマツに特に多く含まれるβ-フェランドレンやミルセンなどの成分が効果を発揮したのだ。ではなぜ精油がNO2を無害化できるのか。調査の結果、精油に含まれる成分が空気中のNO2と引き合って「凝集(粒子が寄り集まってより大きな集合体になること)」することがわかった。これは化学的に反応して別の物質になったわけではないが、こうなるとNO2は無害化される。しかも、紫外線や夏の高温下でもその効果はまったく変わることはなかった」と説明されています。
βフェランドレンは咳も鎮めるので、まさに呼吸器を守ってくれる香りですね。
花粉症のブレンドのには、ユーカリ、ミント、リトセア、ティ-トゥリーなどが選択されることが多いです。従来のこれらのブレンドは、私たちのからだの症状を和らげて抵抗力をあげる方に働きますが、トドマツは花粉の方に働きかけます。攻撃因子を弱めて、私たちの防御因子を強めることで、とても良いブレンドになるのではないでしょうか。